放電

 最近、放電状態です。

 もともとは、旧正月連休に雨森芳州の随筆の翻訳を終え、金曜日に福岡に行って、そこで論文を一本と2月18日に発表する論文のレジュメを書き、帰国後に『江戸の版本』の翻訳を始めるという遠大な計画がありました。
 ところが、拙著『彼らの見た壬辰戦争』が韓国で刊行された後、記者の方々からの質問に対応し、新聞の書評をチェックしていたら、研究の疲れとは質の異なる疲れが感じられるようになりました。やはり、人と接するということはとても難しいことですね。それで、雨森芳州の翻訳からして次々と完成が延びています。翻訳するべき本は机の上に置いてありますが、全く進みません。完全に放電状態です。

 九州での二週間は、新しい調査は最小限に控え、ホテルでテレビを見、とんこつラーメンを食べながら文章を書こうと思っていますが、果たして、世の中が私を抛っておいてくれるかどうか・・・
 踏査は沢山するつもりです。壬辰戦争の舞台である名護屋城跡をはじめ、福岡の黒田藩の跡、有田、伊万里、佐賀、久留米、熊本・八代・・・そして、留学以来会っていない知人らとの飲み会。とにかく、景観と人に沢山接して戻ります。

 拙著の刊行後、様々な反応が出始めました。幸い、好意的な反応が多く、市内の大型書店の中には、売り切れのところもあり、山積みになっているところもありました。反面、「日本人の考えなんか知る必要もない」という反応から、文字にしたくないような悪口をも接しています。このような状況の中、果たして、僕はしっかり研究をしているのか、自分自身を省みます。

 先ほど、とある尊敬する先生から、「先生の本はもう、先生の懐を離れていったのです。もう先生の所有物ではありません。こんな時、自身にだけできる研究があるということを確認することになったでしょう。独創的な領域を開拓したのです。今後、沢山の読者が先生を見守るはずですが、研究の成果で答えればよいのです。先生が歩く道はとても孤独でしょう。当然です。そして、いつか振り返った時、すべてが淡々と感じられることでしょう」というお言葉を頂きました。お言葉に恥じないような研究ができるよう、倒れずに前に進みます。