日本政治学会『年報政治学2018-I』のこと

日本政治学会『年報政治学2018-I』に拙研究への言及がありました。うれしい限りです。

「日本政治思想 <評者 中田喜万>
対象 井上泰至編『近世日本の歴史叙述と対外意識』勉誠出版、2016年

本書の主題のうち、特に力が注がれたのは朝鮮に対する意識であり、その歴史叙述である。(中略)しかも朝鮮出兵の記憶は意外な影響をみせて面白い。1806〜07年のフヴォストフ事件(文化露寇事件)を素材にし、それを誇張して大規模戦争の物語に仕立てた『北海異談』という実録本においても、朝鮮軍記物に言及されるという(金時徳)。そこには、ロシアと手を組んだ朝鮮が日本への復讐を図るという空想も盛り込まれる。(中略)
しかし、この大著の紙幅をこれ以上増やすわけにもいくまい。お仕着せの性急な総括が土台無理なのであろう。巨大なテーマを扱っているのである。分厚い論文集を以てしても、論じ尽くせる類のことではない。実際、同じ編者・関係者による、本書に関連する別の論文集も同時期に続々公刊されている。(中略)また金時徳・濱野靖一郎編『海を渡る史書ー東アジアの「通鑑」』(勉誠出版・アジア遊学198、2016年)。これらを現在進行中の一連の巨大な共同研究プロジェクトとしてとらえる必要があろう。」