0002『絵本太閤記』第1編巻1、2オ‐4オ

【2オ】
一身禍福憂国之心
判然在利義之間
谷風所咏葑菲之比
是読此冊子之要
拙古戯草

*早稲田http://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/he13/he13_01833/he13_01833_0001/he13_01833_0001_p0014.jpg。第3句は『詩経』「邶風・谷風」の一句「采葑采菲,無以下體」から来たと思われる。「葑・菲」はカブ類で、根がまずいといって葉っぱまで捨ててはいけないという意味。「一身の禍福と憂国の心は利と義との間に判然と分かれるので、『詩経』「谷風」の「葑菲」の喩えが、この本を読む核心である。稚拙な古文で戯れに書く」。即ち、「この冊子は立派な書籍ではなく、絵本読本に過ぎないが、それでも、使える内容はあるはずなので、その点を評価していただきたい」という意味か。文章の判読には金沢大学の一戸渉氏、韓国・釜山外国語大学のコ・ジョンウン氏、韓国古典翻訳院のキム・ジョンテ氏の力を借りた。感謝します。

【2ウ】正二位小田右大臣信長公像
【3オ】信長公像賛
足利氏末禍乱如揉(、)四海雲擾干戈罔休
天誕鉅武英発寡儔(、)兵威日盛戦無遺籌
抑強扶弱育穀除蟊(、)遠略益展将逮九州
嘗肆嫚罵股肱成仇(、)賊穿暗路火滅崑丘
 平安皆川愿謹題 [皆川愿] [伯恭](?)

*早稲田http://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/he13/he13_01833/he13_01833_0001/he13_01833_0001_p0015.jpg

【3ウ】藤吉郎像賛
公之未出世喪乾坤(、)天生雄傑夢兆朝暾
将耀其照以破昧昏(、)儀表殊異面貌類猿
迹多可議徳協彼元(、)用兵如銍芟彼凶頑
忽擢卒伍俄主大藩(、)視之其末尚是泥蟠
 平安皆川愿謹題 [皆川愿] [伯恭](?)
【4オ】木下藤吉郎像

*早稲田http://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/he13/he13_01833/he13_01833_0001/he13_01833_0001_p0016.jpg

*今日の翻刻範囲では、架蔵本と早稲田大学本は同じ。

*皆川淇園(1735-1807)は1800年に刊行された『絵本朝鮮軍記』にも漢文賛を載せています。上方の学者としては当たり前だといってしまえばそれまでですが、でも、やはり、何かひっかかりますな・・・