『戦国武将逸話集』『続・戦国武将逸話集』

この二冊を、共訳者である田口寛先生よりご恵贈いただきました。訳注の元になった本はあの有名な『常山紀談』で、『戦国武将逸話集』『続・戦国武将逸話集』とがそれぞれ巻1−7と巻8−15に当たります。

『常山紀談』については改めて申し上げなくても結構でしょう。わたくしの研究に関していいますと、『常山紀談』は、近世日本の対外戦争言説の形成と変遷において、いわばキーポイントとなる文献です。まだ論文にはしていませんが、近世における壬辰戦争(壬辰倭乱、文禄慶長の役、など)言説の流れにおいて、『絵本太閤記』のような大衆的な戦記に多大な影響を及ぼしたことが想定されます。

ただ、近世の多くの文献、特に、軍記・戦記・武辺咄がそうであるように、現代の一般読者の方々にやさしく読んでいただける形の、そして、学問的にも信頼される翻訳・注釈・解題がついているものは、今まであまりなかったような気がします。

共訳者の大津雄一先生には直接お目にかかったことがありませんので何とも申し上げられませんが、田口先生には留学の時から現在に至るまで親しくしていただいております。実直に研究を進んでいらっしゃる姿にいつも感銘を受けてきました。この二冊も、田口先生のあのような誠実なご研究の一端と思われまして、信頼できます。