戦争の日本近現代史

加藤陽子『戦争の日本近現代史』 (講談社現代新書)

この本の韓国語訳を読了。啓発される点の多い、いい本でした。陸軍士官学校の国際紛争論の講義で生徒らに読ませるにはやや難しいような気もしますが。なお、翻訳には多々問題がありました。

とにかく、『戦争の日本近現代史』によって啓発された最も重大な点は、「文明」と「野蛮」との対置構図の扱い方です。拙著『異国征伐戦記の世界』では、前近代の東アジア諸国が自国の戦争を正当化する方法を検討しましたが、文明と野蛮の問題には意図的に触れていませんでした。相手が野蛮だから文明化した我らが征伐するのだという論理をどう処理するかについて、拙著の執筆当時は確立した見解が持てませんでしたし、この問題は人類の根本に繋がる大テーマだと感じたからです。これから数年間、この問題に取り組む事になるでしょう。その端緒はロシア・アイヌ問題になりそうです。