越本の話

ソウルのある古書店で、初めて越本を見ました。四方が赤く、指を入れる穴が順番に開いていたんですが、一緒にいた先生が、「これは越本ですね。大変珍しいものです」と教えてくれました。恐らく、ベトナム戦争に参戦した韓国軍人が持ってきたものでしょう。それで、一束あった越本の中の一つを取って店の主人に価格を聞いたら、主人は暫く黙っていました。あの様な本が店にあったことすら認識していなかった様子でした。そして、すごく高い値段を提示してきました。値段が分からない場合は、兎に角高い値段を言ってみるということでしょう。主人が提示した値段があまりにも高かった為、結局、誰もその本を買いませんでした。主人としては、「日本の書誌学者達が関心を見せたものだからいいもの」と思って、他の人に高く売るつもりでしょう。越本を買う韓国人の研究者が現れるとは思いませんが。兎に角、いい経験でした。

*越本に関する簡単な言及があるサイト
http://www.ic.daito.ac.jp/~oukodou/kosyo/kosyo-36.html