再び小さい一歩

留学を終えて韓国に着き、今まで数十編の論文・本を著しましたが、その中でも、下の4点は格別な意味を有します。

1番は、私が『西がい先生文集』『懲ひ録』以外の朝鮮時代の文集を利用して書いた最初の論文です。2番は、初めて韓国文学学界の雑誌に投稿した論文であると同時に、朝鮮時代の文献から日本の古典文学界に何かを発信しようとした実験の結果。3番は、初めて書誌学界の雑誌に掲載された論文であり、中世の絵入占本といった個人的な趣味の領域を研究の領域に導入した論文でもありました。

そして、今回掲載された4番は、初めて日本史学界の雑誌に掲載された論文であるとともに、今までのメインテーマだった壬辰戦争と、今後のテーマとして考えるロシア問題とを結びつけた最初の論文です。韓国と日本、文学界と歴史学界、どちらの学術誌に投稿すべきかの問題で2年も悩んだ末に、今回、やっと公になりました。この論文が出たので、これからは本格的に17−19世紀の北アジアといった問題系を取り扱うことができます。長い間の宿題が解決できて感無量です。

1.「済州に漂着した日本人・せるとうすとは誰か-尹行恁『碩齋稿』から見る、朝鮮時代における日本の壬辰戦争言説の受容-」『日本学報』86 (韓国日本学会, 2011·2)

2.「朝鮮後期の文集に見える日本の文献『撃朝鮮論』について」『国文学研究』23 (国文学会, 2011·6)

3.「『唐四柱』の文献学的な考察-日中の文献との比較によって」『書誌学報』37 (韓国書誌学会, 2011·6)

4.「19世紀初期日本の対ロシア戦略と、前史としての壬辰戦争-『北海異談』における言説を中心に」『日本歴史研究』37 (韓国日本史学会, 2013·6)