転換点を迎えて考える

 博士論文を完成する前は、数編の論文が掲載される年と、何も書かず、構想を練る年とが1年おきににありました。それでいて、2009年の下半期に博士論文を執筆する過程で、はじめて「疾走する」という感覚を感じました。そもそもの構想を拡張することになり、毎週1点の学術論文を書く気分で4つの新しい文章を書いたと思います。そうして完成した論文で審査を受け、出版契約。
 帰国後は、2010年の上半期に『壬辰戦争関連日本文献解題‐近世編』を完成。この本の原稿は留学前から手がけていたので、ほぼ6・7年がかかったことになりますね。下半期には博士論文を全体的に直して『異国征伐戦記の世界-韓半島・琉球列島・蝦夷地-』を年末に出版。同時に、『秀吉の対外戦争:変容する語りとイメージ--前近代日朝の言説空間』に収録する数編の論文を執筆。
 2011の上半期には『彼らの見た壬辰戦争‐近世日本のベストセラーと戦争の記憶』を、下半期には、太閤記・朝鮮軍記物の近代以降の展開を眺望した文章を書いて年末に青山大学で発表。この論文は、近日中に出版される共著『日本と<異国>の戦争と文学』に掲載されます。昨日からこれの第2校を見ています。
 2012年の上半期には壬辰戦争と丙子戦争に関する日本語と満洲語の文献を比較するといった構想を実現し、8月にソウル大学の大会で発表しました。ただ今始まった2012年の下半期に私を待っている大事業は、2013年の上半期に出版される『懲ひ録』訳注本の執筆です。
 このように振り返ってみると、博士学位の取得までには1年ごとに休止期をおいていたのが、取得後は、半年に1点ほどの大きい事業をやるようになったのが分かります。これからは、その他の作業を少しずつ減らしながら、このペースを維持していきたいと思っています。尊敬する先生は80歳に2冊目の単著をご出版なさったのですが、私が今37歳なので、このペースでやり続けるとしたら、自分がやりたいと思っている研究を、ある程度はやり遂げることができるかもしれません。勿論、さまざまな現実的な制約が私を待ち受けていることは容易に想像できます。果たして、自分の研究パターンはどのように変化していくのやら・・・多くのことが完結し、多くのことが片付けられるこのごろ、考えます。