0001『絵本太閤記』第1編巻1の序文

*架蔵本には表見返しがない。表見返しを持つ『絵本太閤記』の例:早稲田大学本(http://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/he13/he13_01833/he13_01833_0001/he13_01833_0001_p0002.jpg)。定説にはなっていないようであるが、表見返しを持つものが『絵本太閤記』の初期の刷りだといわれている。ただし、普通の文献の表見返しとは明らかに異質なので、今のところ、よく分からない。


【太序1オ】詩は声あるの画(、)画は象
あるの詩とかや(。)文は世の事
実における詩のまたつはらか
なるものにして(、)これに画を
あはすれは、窓中に万里の
【太序1ウ】遠を縮め(、)机上に千載の古を
まねき(、)象と声とまさに
視聴かことし(。)此文即是也(。)
豊太閤の初生より天下の
権を掌握し給ふに及ひ一世の
【太序2オ】雄功を記し(、)人をして驚歎
せしめ(、)且傍他人の事状に
おきても隠たるを顕はし(、)
うもれたるをあきらか
ならしむるもの賞すへき哉(。)
【太序2ウ】そも〳〵昇平とし久しく
民人枕を高うして腹を鼓し
干戈といふものゝ世に有事を
しらす(。)あはれ(、)此記の録する所を
見て(、)いまの治世の忝きを
【太序3オ】思ひ(、)心を正うし(、)身を修て(、)
各其職を慎しみ守らんこと
こそねかはしけれ(。)吾
方広殿は豊太閤の名残
とゞまる跡にして(、)予も殿下の
【太序3ウ】吏に属するをもて此端に
言を添む事をもとむ(。)予は
文筆に乏けれは固辞すれとも(、)
需てやまされは(、)聊数言を
のへて責を塞のみ
【太序4オ】寛政丁巳歳初秋
大仏殿吏山下大和守
源重直


(ここまで、早稲田大学本はhttp://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/he13/he13_01833/he13_01833_0001/he13_01833_0001_p0003.jpghttp://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/he13/he13_01833/he13_01833_0001/he13_01833_0001_p0004.jpghttp://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/he13/he13_01833/he13_01833_0001/he13_01833_0001_p0005.jpghttp://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/he13/he13_01833/he13_01833_0001/he13_01833_0001_p0006.jpgに当たる。)

(*架蔵本の画像をいちいちスキャンするのは大変な作業なので、今後、翻刻した分に当たる実物の画像を早稲田大学のウェブページから引いてくることにします。そして、架蔵本と早稲田大学本との間に相違がある場合は、その旨を記しておきます。)